シンセ用語集:カ行

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・ガイド・トラック (Guide Track)

 クリックの項参照。

 


・カセット・ストレージ (Cassette Storage)

 コンピューターを利用した初期のシンセサイザーで,メモリーの内容をバックアップするためデータを音に変えてテープに録音し,保管すること。もちろんカセット・テープでなくオープン・リールでもいいわけである。

 


・カットオフ・フレケンシー (Cutoff Frequency

 VCF で音色を調整するツマミのこと。専門的には VCF でカットする周波数の位置のことである。

 VCF がローパスの場合にはカットオフ・フレケンシーで設定したより上の周波数帯の音はカットされる。逆にハイパスの場合には設定したより下の周波数帯の音がカットされる。

 シンセサイザーの VCF では,このカットオフ・フレケンシーの位置を電圧の高低で電気的にコントロールして様々な音色変化を得る。

       G49

VCF(ロー・パス)に鋸歯状波を送り、カットオフ・フレケンシーを上下する

 


・カプラー (Coupler)

 オルガンなどで,2つ以上の音色(倍音やプリセット・サウンド)を一緒に鳴らす機能のこと。

 


・カラー (ColorまたはColour)

 音色,音質の意味。

 VCO の波形選択や VCFカットオフ・フレケンシーをこのように呼んでいる事がある(主に古い機種やオルガン奏者向けのキーボードで使用されている)。

 


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・キー・トランスポーズ (Key Transpose)

 移調の意味。

 シンセサイザーで演奏する音程を本来のピッチではなく,演奏者が弾きやすいキーに移調して演奏できる。またシーケンサーで繰り返されるパターンを押さえた鍵盤の音程から始められる機能もこのように呼ぶ。

 一般的にはキー・トランスポーズと言った場合には音程を好きなキーに移動できる機能を言い,単にトランスポーズと言った場合にはスイッチでシンセサイザーの音域をオクターブ上下に切り替えられるような機能の事をさすことが多い。

 例外的に KORG の 800DV では発音モードをこう呼ぶ。この機種のキー・トランスポーズは押さえた鍵盤に対して2つのシンセのセクションのどちらが鳴るかを決定する機能をさす。

 


・キーボード (Keyboard または Kybd、Kbd)

 鍵盤のこと。

 シンセサイザーのキーボードでは弾いた音程に対応した電圧(CV)と、キーを押している間だけ出力されるゲート信号,そしてキーを押した瞬間に出力されるトリガ信号が出力端子に出るようになっている(トリガーはついていない機種も多い)。

 Kybd、Kbd 等、略される事が多い。

 


・キーボード・アマウント (Keyboard Amount)

 キーボード・フォローの項参照。

 


・キーボード・トリガー (Keyboard Trigger または Key Trig)

 キーボードを押すことによって何らかの現象が起きること。

 LFO で鍵盤を押すごとに出力波形が特定の位置から再スタートすることをさす場合や、マルチ・トリガーのモードでエンベロープ・ジェネレーターを再起動させるために使用したりする。

 トリガーの項も参照。

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サイン波、鋸歯状波、矩形波によるビブラートで、最初はLFOのキーボード・トリガーをオフで、次にキーボード・トリガーをオンにしてみる。

 


・キーボード・フォロー (Keyboard Follow)またはキー・フォロー(Key Follow)

 キーボードからの CVVCF に送る機能。

 ボリュームまたはスイッチの2タイプがある。これを上げれば弾いた鍵盤の音程に対応して VCF のカットオフ・フレケンシーの位置が上下する。これがないと低い音域では固い音でも高い音域では音が柔らかくなってしまう。

 通常ボリューム・タイプの場合には右に回し切ったときにカットオフ・フレケンシーの位置は音程に100%追従して動く。また MOOG 等の製品ではこれを2つのスイッチで行っているものもある( Minimoog ではKeyboard Controlというスイッチ)。両方のスイッチがオフならキー・フォロー0%,片方をオンにすると50%,両方オンで100%のキー・フォローになる。

最初キーボード・フォローを0で、次に10で音階を演奏。

 


・キーボードCV (Keyboard CV または Key CV、KCV)

 シンセサイザーのキーボードを押したときに出力される音程制御用の電圧のこと。

 通常は 1V/1oct の規格の電圧が出るよう設計されている。たとえばC(ド)の音を押したときに1Vの電圧が出ていたとすると,C#(半音上)の音を押すと1と1/12Vの電圧(約1.083V)が,1オクターブ上のCの音を押すと2Vの電圧が出力される。

 Key CV、KCV と略される事も多い。

 


・基音

 ファンダメンタルともいう。演奏した音程のサイン波

 ほとんどの楽器の音は演奏した音程(=基音)の他に高い周波数の倍音という成分が含まれている。音は基音だけでは非常に柔らかく聞こえる(口笛やフルート系の音になる)。

 実際の音にはこの基音の上に様々な音程の倍音が含まれて固い音として聞こえるのである。

 倍音の項も参照。

 


・Q

 レゾナンスのことを,このように書いているシンセサイザーもある。レゾナンスの項参照。

 


・共鳴

 音が鳴ったとき,その影響で他の発音体も一緒に鳴りだす物理現象。英語では Resonance(レゾナンス)。

 発音体の共振周波数と音源の周波数が一致したときにこの現象が起こる。たとえばバイオリンは弦の振動が胴体に伝わり,その胴体が共鳴現象を起こして複雑な響きとなる。この共鳴現象を電気的に作り出す機械をレゾネーターと呼んだりする。

 


・鋸歯状波 (Saw Tooth)

 のこぎり波とも言う。名前の通りノコギリの歯のような波形をしている。

       G61

 豊富な整数次倍音を含んでおり,シンセサイザーで最も良く使われる波形。倍音の含み具合は1倍音が1に対し,2倍音は1/2,3倍音は1/3,4倍音は1/4...という量になっている。バイオリンやトランペット,ピアノ等の弦楽器,金管楽器の音作りに利用される。

鋸歯状波のサウンド。

 


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・クォーター・トーン (Quarter Tone)

 半音のさらに半分の音程。1/4音のこと。例えばソとソ#の間の音程などをいう。

 ブルースや民族音楽で使われることが多い。"Korg の Sigma" では、隣り合う2つの半音を同時に押すと、その間のクォーター・トーンが演奏できるモードが付いていた。

 ブルースを例にとるなら、 C のキーのブルースでは F と F# の間の音程が特徴音となる。

クォーター・トーンによる1オクターブのスケール。

 


・クォンタイザー (Quantizer)

 ARP やEMLのアナログ・シーケンサーについていた機能。

 当時のシーケンサーは1つのボリュームに1つの音程をセットし,その電圧を VCO に送って音程としたわけだが,ボリュームの微妙なズレによって必ずしもジャストな音程の電圧を出力できるわけではなかった。ジャストな音程の出せる CV とは0V(最低のC),1/12V(C#),2/12V(D),3/12V(D#)...といった1/12V単位の電圧である。

 クォンタイザーは中途半端な入力電圧を強制的に1/12V単位で最も近い電圧に変換する機能を持っている。また機種によっては半音階(1/12V単位)以外の電圧設定の可能なものもあった。

 


・矩形波 (Square Wave)

 方形波とも言う。奇数次倍音のみを含んでおり,クラリネットの音や初期のコンピューター・ゲームの音はこの波形である。

 ヤン・ハマーのソロ・シンセサウンドなどでも良く使われている。図で見るとわかるように波形の上と下の比率が50%ずつになっている。

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矩形波のサウンド。

 


・グライド (Glide)

  MOOG の場合,音程が段階的ではなくなめらかに変化する効果の事をいう。

 この時間を調整するのがグライド・タイムのボリュームである。他社ではポルタメントというのが一般的。

 初期のローランド製品のグライド・ボタンでは,ボタンを押すと音程が半音ほど下がり,離すと弾いている音程にゆっくりとピッチが上がっていくという効果が得られた。 KORG でも同様にペダルを踏むとピッチが下がり(または上がり),離すと元に戻るという効果を得られるボリューム/ペダル機能のある機種もあった。

 


・クリック (Click)

 カチカチと鳴る音。メトロノームの音をいう。

 多重録音時には,このクリックをテープの一番最後のトラックに録音し,それを聞きながら演奏するのが一般的だった。このガイドになるトラックをクリック・トラック,ガイド・トラックなどと呼んでいる。

 また日本ではクリックの音に使用したリズム・ボックス『ドンカマチック』という KORG の商品名から由来したドンカマという言い方も一般的である。

 生楽器も含むレコーディングの場合、ミュージシャンのヘッドフォンからのクリック漏れを防ぐため、音色が柔らかくピッチが低めのスネアやカウベルの音を選んで使うようにする。

シンセサイザーのレコーディングでよく使われるクリック音。バンドのレコーディングではリズム・ボックスのスネア(またはカウベル)の音をクリックに使う方が一般的。


・グロウル (Growl)

 VCFLFOサイン波を送ったときに得られる効果。動物のうなり声のように聞こえるのが名前の由来。

スピードを変化させたグロウルのサウンド。

 


・クロック (Clock)

 基準となるタイミング信号のこと。

 シンセサイザーでクロックというと,サンプル&ホールドで,サンプル・インプットの信号を取り込むタイミングの信号のことや,アナログ・シーケンサーでステップを進めていく信号のこと。

 


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・ゲイン (Gain)

 アンプで信号を増幅したり減衰させたりすること=音量調整。凡例「ゲインを上げる。」

 また増幅器の入力:出力の割合=利得。ゲインの値が大きいほど入力信号は大きく増幅される。

 


・ゲート (Gate)

 シンセサイザーの鍵盤を押している間,ゲート・アウトから出力される信号。

 これをエンベロープ・ジェネレーターに送り音を出す。通常は鍵盤を押していない状態で0V,鍵盤を押すと+10V前後になるものが多いが,MOOG のように鍵盤を押すと高い電圧が低くなる(0Vになる)タイプのものもある。

 鍵盤を押した時に、電圧が上がるタイプの物を V-Trig、電圧が0Vに下がるタイプを S-Trig と呼んでいる(トリガーという言葉を使っているが実際にはゲートの事を指す)。V-TrigS-Trig の項目も参照。

 


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・高音優先

 ハイ・ノート・プライオリティの項参照。

 


・後着優先

 ラスト・ノート・プライオリティの項参照。

 


・高調波

 倍音の項参照。

 


・コース・チューン (Coarse Tune)

 VCO のピッチを大まかに調整するボリューム。 VCFカットオフ・フレケンシーでこの言葉が使われる事もある。

 ファイン・チューンの項も参照。

 


・コーラス (Chorus)

 元の波形を時間的に(数ミリ秒)ずら,ずれた時間を微妙に長くしたり短くしたりして、元の音に重ね、音を厚く聞こえさせる効果のこと。または、複数の音源が鳴った時の同様の効果。

 アンサンブル(Ensemble)効果とも呼ばれる事があるが、コーラスは比較的単純な音の広がりを指し、アンサンブルは弦楽合奏等の厚いサウンドを指す事が多い。

 この場合、コーラスは一系統の音のずれ、アンサンブルは複数のコーラスを利用して効果を作り出しているのが一般的。

 アンサンブルの項も参照。

 また,シンセサイザーではパルス波パルス・ワイズLFO で揺らすことにより同様の効果を得ることもある。コーラス効果を付加するジェネレーターを複数使用すると,"Solina" のように厚い音のするアンサンブル効果を得ることができる。

最初はコーラス無し、次にありで演奏。

 


・コントゥア・ジェネレーター (Contour Generator)

 エンベロープ・ジェネレーターと同じ。MOOG のプロダクトではこの名称を使用している。

 


・コントロール・ボルテージ (Control Voltage)

 CV の項参照。

 


・コンパレーター(comparator)

 設定した基準値を越えた場合に H、そうでない場合には L を出力するモジュール。基準値の事をスレッショルド・レベル(日本語では閾値=しきいち)と呼ぶ。

 シーケンサー等で、ある条件に合致した時だけスイッチがオンになるといった使用法がある。特定の条件でコンパレーターがオンになるようにセットを作り、条件が合致した時だけ信号が別の経路に行ってフレーズや音色が変わる、といった事が考えられる。

 また、音色作りの応用としては、サイン波をコンパレーター(この場合スレッショルド・レベルが CV コントロール可能なモジュールが必要)に送り、スレッショルド・レベルを CV で上下に揺らしてやると、出力されるパルス波の幅が CV の上下によって変化し、パルスワイズモジュレーションのような効果が得られる。モジュールの組み合わせ方によっては非常に複雑な波形を作り出す事ができる。