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PS-3100:

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   概要  ウンチク  その他
PS-3100 はこんな音

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  ウンチク :

●PS-3100 は完全なポリフォニック・シンセとして登場したパッチ可能なシンセサイザーである。各鍵盤分の VCF/VCA/エンベロープ・ジェネレーターをもっているが,オシレターに関しては最高音の12音分だけを持ち,それから下は分周によって音を作り出す,オルガン方式のジェネレーターが採用されている。

 ただしトップの 12 個の発振器は VCO を使用しているので,ピッチ・ベンドやモジュレーションは他のシンセサイザーと同じように自由に行うことができた。


●サウンドは VCO の音が以前のものよりも細くなり,1音でもぶ厚い音のした Mini Korg 700S や 800DV とは少し違ったサウンド・キャラクターになってしまった。そのためか,PS シリーズにはアンサンブルというコーラス・ジェネレーターやレゾネーター(PS-3200 では 7 素子のイコライザー)が装備されており,音の厚さをカバーしている。ただし,幅の狭いパルス波によるハープシコード系のサウンドは音が細くなった分,作りやすくなったともいえる。


●当時はまだコンピューターを利用したキー・アサイン技術は開発されていなかった。したがってオルガンと同じように 1 鍵に対して 1 発振器という考え方になっており,ポルタメントをかけたりということは不可能だった。疑似的なポルタメント効果を得るにはエンベロープ・ジェネレーターの電圧を VCO に送って全鍵盤分の音程をまとめてポルタメントすることになる。


●12 個の発振器のチューニングを微妙に変えることで妙な音階を作ることが可能である。たとえば C# のチューニングを微妙に下げて C - C# - E - F - E - C# - C,というスケールを弾くと,いきなり中近東の世界に入ってしまう。もっともこれは他の楽器と一緒に演奏してる時にやると怒られますけどね。他にもスケールを適当に上下させるとガムラン音楽風のサウンドが作れたりと,結構応用範囲は広い。


●PS シリーズでは各セクションのイン/アウトが全てパッチに立ち上がっているわけではない。一番困るのはエンベロープ・ジェネレーターのアウトがパッチにないということである(ジェネラル・エンベロープ・ジェネレーターのアウトはあるが VCF に使用するエンベロープのアウトがない)。これはパッチで音作りをする人間にとってはかなり致命的な問題である。VCF に送ったのと同じエンベロープ電圧を他のモジュールにも流用したいというのは絶対に必要な機能なのに...何か内部設計での問題なのだろうか。


●ノイズ・ジェネレーターはモジュレーション・ジェネレーター(MG)-1 についている。LFO の 波形 と一緒にノイズをモジュレーション・ソースとして利用できる。もし音源としてノイズが欲しい場合には MG-1 でオシレターに深いモジュレーションをかけ,これを利用すればそれぞれのオシレターがノイズ音源として利用できる。また MG-1 は可聴範囲まで発振可能であり,アウトプットの VCA に対して利用すれば,リング・モジュレーター効果を得ることができる。


●PS シリーズにはキーボードCV というものが存在しない。音源となる VCO は常にそれぞれの音程を発振しており,キーボードからのゲート信号でこれらを鳴らすからである。したがって,キーボードCVで MG のピッチを変えるといったことはできない。この辺がコンピューターによるキー・アサイン技術を利用しないアナログ方式のフル・ポリフォニック・シンセサイザーの弱点ともいえる。


●PS-3100 には不思議なホールド機能がついている。通常,ホールドといえばスイッチを入れて鍵盤を弾くと,その音程がホールドされるはずだが, PS-3100 ではホールドをオンにしてアタックを 3 以上に上げ,鍵盤をスタッカートで弾く(アタック・タイム終了前に鍵盤から手を離す)。すると,その音がホールドになるのである。ホールド解除にはスイッチをオフにするか,ホールド中の音をもう一度弾く。


●他にも PS-3100 には KORG 独自の回路設計による謎のボリュームがついている。

 VCF のエクスパンドは KORG の説明ではカットオフの位置を(エンベロープで)動かすことにより音色のダイナミックな変化を得る,ということになっている。言葉から判断すると VCF へのエンベロープ電圧の深さを調整するボリュームのようにとれるが,実際にはエンベロープ電圧,フィルターのピーク特性,フィルターのカットオフ・スロープなどが微妙に変化する。これは意図的にそうしたというより,フィルター回路を作ってみたらそうなったけど,結構いいので採用した,という感じである。

 またサンプル&ホールド(S&H)にあるシンクロ・スイッチも謎である。これをオンにすると,S&H の LFO はサンプル・ソースとなるモジュレーション・ジェネレーター(MG)1 のアウトにシンクする。したがってサンプリングのタイミングが MG1 のスピードに一致するわけだが,完全に一致するわけでもなく,S&H のクロックも相変わらず作動しており,時々気が向くと MG1 にシンクロする。そういうわけで,変な信号を作るのにはいいかもしれないが,そこに論理性を求めようとするとノイローゼになるので,あまり深く考えて使ってはいけない。要はいい音が出ればそんなものはどうでもいいことなのである。

 このあたりはマニュアルを読んでもいまいち釈然としない。


●KORG のシンセサイザーは MOOG や ARP のように 1V/1oct という統一規格に準じていなかった。このため,パッチングで音を変更しようすると,使用する機能によって電圧の幅が違ってしまうことがある。たとえば, VCO は - 3V ~ + 3V でモジュレーションをかけるのに,VCF では - 5V ~ + 5V ,VCA では 0V ~ + 5V という規格になっている。もし鍵盤左のコントロール・ホイールで VCO ,VCF ,VCA をコントロールしようとすると, VCO では上下 2V 分電圧が大きすぎ(この程度なら VCO は問題なく作動するが)VCA では - 5V ~ 0V までの間(ホイールの手前からセンターまで)VCA が動作しないことになってしまう。

 そこで,こういった不統一を解決するためボルテージ・プロセッサーという電圧幅を変えるモジュールが追加されている。これは入力電圧がマイナスの時(リミッター B)とプラスの時(リミッター A),それに対応して出力電圧をどのようにするかを決めるものである。たとえば,リミッターA を - 5(V)に,リミッターB を + 5(V)にセットしてボルテージ・プロセッサーにホイールの電圧を送る。すると,出力には上下反対の電圧が出てくる(ホイールを上げると低い電圧,下げると高い電圧)。

 上記の例で,ホイールと VCA の関係を正常(ホイール手前で VCA が閉じ,ホイールを上に上げ切ると VCA が全開になる)にするには,リミッターA を + 5(V)に,リミッターBを 0(V)にセットすればよい。これで入力が - 5V の時には出力は 0V に, + 5V の時は出力も + 5V になるのである。


●PS シリーズには何に使うかわからないが,使い方を考えるだけで結構楽しい機能がついている。たとえば PS-3100 のジェネラル・エンベロープ・ジェネレーター(GEG)にある KBD トリガー・セレクトは鍵盤を押した数が指定数に達するとエンベロープ・ジェネレーターが働く。もし KBDトリガー・セレクトを 4 にセットしていれば,4 つめの音を押さえたと同時に音程が 1 オクターブ上にグリッサンドする,なんていうこともできる。

 使い方次第でディレイ・ビブラートを作ったりもできるが,この効果を得るためのパッチは結構面倒である。まず KBDトリガー・セレクトを適当な数字にセットし(1 ならキーを押すごとにディレイ・ビブラートがかかる),アタック・タイムを適当に上げる。

 次にそのアウトのうち - 5V から 0V に電圧の変わる方のアウトをボルテージ・プロセッサーに送る。ボルテージ・プロセッサーではリミッターA を + 5V に,リミッターB を 0V にセットする。これで GEG の電圧はオフの時 0V ,鍵盤を押してしばらくすると + 5V になる。この電圧をモジュレーション・ジェネレーター(MG)1 のアウトにつながっている VCA にパッチしてやればいいのである。


●上記のような規格の不統一は,その後の KORG 製品ラインナップの足かせとなってしまう。本体だけで電圧の流れを処理してしまうならいいが,シーケンサーや外部のコントローラーで PS シリーズをコントロールしようとすると,いろいろな問題が出てきてしまうためである。結局こういった規格の整わないシンセサイザー(KORG やヤマハ)はシーケンサーによる自動演奏という,80 年代に入ってからの音楽制作に対応することができなくなってしまい,姿を消していくことになるのである。

 もちろん KORG にしても,V/Oct の規格というものは承知していたはずであるが,値段を下げるために独自の規格にせざるを得なかったのであろう。


●PS シリーズ発売時,KORG は”キース・エマーソンも PS-3300 を利用”と大々的に宣伝をうった。しかし 1994 年になってエマーソンは PS シリーズや MS シリーズなど大量の KORG 製品を売ってしまった。


●PS-3100 を 1 台目のポリフォニック・シンセとして買うのはあまりオススメできない。また PS シリーズが欲しいなら少しがんばって 3200 の中古を探したほうが得である。いずれにしてもメンテの問題があるので,購入の際には,その辺の情報をチェックしてから買ったほうがいいだろう。


外部とのインターフェイス

CV/ゲートのイン/アウト:あり。

 ただし Hz/V と Oct/V が混在しているため,外部との接続には MS-02 等のインターフェイスがあったほうが便利。

MIDI:5G-MIDI 取り付け可能。17万円(1995年)。

改造は Five-G 販売のワンオーナー品のみ。