●パラフォニックは ROLAND が作った言葉である。当時そろそろ登場してきたコンピューター制御による和音演奏可能なポリフォニック・シンセサイザーのポリフォニックという言葉に対しての造語だが残念ながら RS-505 で使用されただけで,以後二度と使用されることはなかった。
●RS-505 はベース,シンセサイザー,ストリングスの 3 つの音源セクションをもっているが,もとになっているジェネレーターは 1 つであり,その波形をフィルターにかけたりアンサンブル・ジェネレーターにかけているだけで,全てのセクションを総動員してもストリングス/オルガン系の音から抜け出るほどのインパクトある音は出せなかった。
●RS-505 の音源部分はコーラス効果のない単純な波形を発振するジェネレーターをもっている。この信号を BBD を使用したアンサンブル・ジェネレーターに送り,厚みをつけるようにしている。当時発売されていたストリングス系音源はほとんどが,このような方式でアンサンブルの音作りをしていた。
●シンセサイザー・セクションの音源は鋸歯状波と矩形波を足したような波形を利用しており,フィルターを通して加工できる。しかしこの音はリードを取れるほど派手ではなかったので,ストリングスの音色で伴奏パートを弾きながらシンセサイザーの音でメロディーを取るというようなことにはむいていなかった。どちらかというと,ちょっと変わったストリングス・サウンドを作るオマケ的な要素が強かった。
●RS-505 のシンセサイザー・セクションの便利な使い方としては,通常のストリングスでは作りにくいディケイ/リリースの速い音を作り,それをアンサンブル・ジェネレーターに通してピッチカートっぽいストリングス・サウンドを作るというのがあった。
●パネルを見るとわかるように,RS-505 にはストリングスとシンセサイザーの 2 つのセクションに共通のリリース・タイム・ボリュームがある。しかもリリース・タイムのボリュームはシンセサイザー・セクションにもあり,重複している。シンセサイザー・セクションでリリース・タイム 0 の音を作り,ストリングス/シンセ共用のリリース・タイムを目一杯上げると妙なことが起こる。当然シンセの音は鍵盤から手を離すとすぐに消えるわけだが,その直後に再び鍵盤を弾くと,前に弾いた音の余韻がうっすらと残っているのである。したがってスタッカートで速いフレーズを演奏すると音が濁ってしまうのである。
これは他社のストリングス/シンセの複合キーボードにもしばしば見られた現象で,回路を単純化して安くしようとすると,この手の問題にぶつかてしまうのだろう。
●上記とは逆に共用部のリリースが 0 になっていると,シンセのリリースをいくら上げても余韻はほとんど長くならない(なぜか少しだけは長くなるが)。結局シンセ部で長い余韻が欲しいときは共用のリリースは上げなければならない。しかし,こうすると当然ストリングスの方の余韻も長くなってしまう。なかなか難しい楽器であった。
●アンサンブル・モードは I,II,III の 3 つがありそれぞれ小編成ストリングス,大編成ストリングス,フランジャーのかかったようなストリングスのサウンドを作ることができた。レコーディングではまずモードIで演奏を録音し,次に全く同じことをモードIIで演奏して音を重ねてやると厚み/奥行きが出て効果的だった。
●RS-505 では 3 つの三角波オシレターと2つのインバーター(オシレター波形の位相を逆転させる)を組み合わせて 4 つの BBD を制御し,ステレオ出力するような設計になっている。
●RS-505 のマニュアルの後半に出てくる参考フレーズ例は,実は私が書いている。で,この譜例の中に左手の音域が異常に低くて,こんな音域でコードを弾いたら音にならない!という指摘をあちこちからいただきました!でも,これは間違いではありません,楽器のセッティングを見るとわかると思うんだけど,鍵盤左半分の音域は 4’で普通より 1 オクターブ高く設定されてます。したがって譜面通り弾いても音域は大丈夫!もしマニュアルつきで RS-505 を買っても,この点はご了承くださいまし!
●ところで,東京は銀座のソニー・ビルの 1 階と地下 1 階をつなぐ階段はドレミファ階段といって上から順番に降りてくると(別に下から登ってもいいんだけど)色々な音が鳴るのはご存じかな(まだあるだろうな)?この RS-505 のベース・サウンドと,この階段の音色を聞き比べてみると何となく似ている!なぜかっつーと設計した人が同じなのであったりする。全く同じ回路のわけはないんだけどイメージが近いってのは,やはり楽器の音って開発者の個性の現れなんだろうな。
●私は,このRS-505 を当時参加してた 3 つのバンドのライブで使っていた。あまりにもしょっちゅう使うので消耗が激しく,スタジオ用に同じものをもう 1 台購入した。ところが最初に買ったのと次に買ったのでは微妙に音が違う。後期のものの方が音がキツイのである。今となってはチェックのしようもないけど,内部的には微妙な部品や回路の違いがあったようである。もし RS-505 を購入したい場合には初期モデルは包み込むような柔らかい音,後期モデルはきつい音がすることを覚えておくといいだろう。
●外部インプットは RS-505 のアンサンブル・ジェネレーターをエフェクターがわりに使えて結構便利である。ただしノイズは相当多いので覚悟が必要だ。
まあ,ストリングスを買いたいけど,どれがいい?と悩んでる人は,安い値段で出てれば選択肢の一つに入れてもいいかもしれない。絶対これがいい!というほど押せるキーボードではありませぬ!(と言いつつ私は結構使ってますけどね)。
外部とのインターフェイス
CV/ゲートのイン/アウト:ゲート/トリガー出力のみあり
MIDI:改造は不可能
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