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Polymoog Synthesizer:

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POLYMOOGALL
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   概要  ウンチク  その他
Polymoog Synthesizer はこんな音

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  ウンチク :

●概略に書いたように,Polymoog には Polymoog Synthesizerと Polymoog Keyboardの 2 種類がある。ここで説明するのは Polymoog Sythesizer の方だが,全部書くと長ったらしいので,ここでは単に Polymoog と表記することにする。


●Polymoog のプロト・タイプは EL&P のアルバム,『恐怖の頭脳改革』(1973)に使用されたのが最初で,アルバムでは MOOG ポリフォニック・アンサンブルと記載されている。同アルバムの『用心棒ベニー』や『悪の経典# 9 』などで,このプロト・タイプ Polymoog は多用されている。

Polymoog のプロトタイプが多用されている!


 その後,同器は一度アポロという名前で発売がアナウンスされた。アポロはレイラというタッチ・センス付のリード・シンセ,タウラス・ベース・ペダルと同時発売される予定だったが,結局この中で発売されたのはタウラス・ベース・ペダルのみで,しかもプレス発表のイラストとは大分違うデザインになっていた。

 アポロは 1 系統のオシレターしか持たず,音にリリースがつけられなかったり,厚みがなかったため大幅な設計変更となり結局 Polymoog という名前で 1975 年に市場に出ることになった。

 ●レトロ・カタログ大全にある Apollo のパンフレットを見る


●Polymoog は 2 系統のオシレター,1 VCF +エンベロープ・ジェネレーター,1 VCA +エンベロープ・ジェネレーター,3 ポイントのレゾネーターという大別してしまうと実に簡単なセクションで構成されている。オシレターはさらにチューニングやビブラート,パルス・ワイズ等のセクションに分かれており,それぞれのセクションについてプリセットのパラメーターを使うか,マニュアルで動かすかを決める PRE/VAR のプッシュ・ボタンがついている。


●Polymoog というと,何となく『凄い!』という幻想を抱きがちだが,実はオルガン+シンセ,という感じの完全ポリフォニック・シンセであり,和音は自由に出すことができるが,コンピューターによるキー・アサインを行っているわけではなく,和音のポルタメントなどは全くできない。(中央のリボン・コントローラーでベンディングすれば話は別だが...)

 VCF は全体で 1 個しかなく,そのためバリエーション・モードのシンセサイザー部分で音を作った場合,1 つの音を押さえながら他のキーを弾くと,エンベロープの状態によっては音を 2 度打ちしてしまう。

 しかし,1 ~ 8 までのプリセットの場合にはこの現象は起きない。プリセット音源では VCF をエンベロープで動かすようなことをほとんどしていないためである。

 また VCF へのキーボードCV はモノフォニックの 1 系統分しかない。このキーボードCVにはパネル左の”EXT KB グライド”でポルタメントをつけることができる。このボリュームを上げ,VCF のエンファシスを 10 にして鍵盤を弾くと,音程はいきなり変わるのに VCF へのキーボードCV にだけポルタメントがかかり,面白い効果を得ることができる。


●Polymoog は,1 鍵に対して矩形波と鋸歯状波の 2 つのオシレターを持っている。それぞれは完全に独立した発振器となっており,ユニゾンや完全 5 度,オクターブといった設定で演奏することができる。また,矩形波/鋸歯状波ともに別々な LFO でビブラートをかけることができ,さらに矩形波の PWM も別な LFO でモジュレーションをかけることができるので,かなり厚い音を作ることができる。

 また 2 系統のオシレターのうち矩形波オシレターは鋸歯状波オシレターにシンクさせることができる(F.M./PM セクションのプッシュ・スイッチを LOCK にするとシンクになる)。マニュアルによると LOCK モードにして矩形波に強制的にビブラートをかけるとフェイズ・モジュレーションで音色が変わると記載されているが,どう考えても音色の変化はない。これって僕の楽器だけ?!


●オシレターの波形はかなり妙なモジュレーションがかかっている。実は Polymoog はつい最近まで購入しなかったのだが,それにはこれに関連した理由がある。

 中古市場に出回るどの Polymoog もみなオシレターの音が妙にブルブルと震え,ちょうど速いビブラート(しかも質の悪い)をかけたような音がしていた。この現象は通常では電源電圧が低いときにたいがいのアナログ・シンセで発生する現象であり,私が出会った Polymoog も全て電源部に問題がある故障品だと思っていた。ところが最近になって Polymoog を使用したアルバム(チック・コリアの『浪漫の騎士』)で,そのブルブルと震えた音が使われているのを聞き『なるほど!故障ではなく,これが正しい音なのか!』と悟ったわけである。

正しい Polymoog の音が聞ける?チックコリア「浪漫の騎士」

 実際,Polymoog のオシレター音はフィルターを全開にしてみると妙にモジュレーションのかかった音がする。もし,あなたが Polymoog を買おうと思って楽器を試奏したとき,妙なビブラートがかかっていても,それは故障ではないのである!この楽器はそういう音なのだ!

 そう思って聞けば,このモジュレーションも個性と言えなくはない。ただし,クリアな鋸歯状波の音で華麗なクラシカル・フレーズを弾きたい人には絶対にお勧めできないサウンドである。


●アウトプットには VCF ,RES(レゾネーター・アウト),モード(プリセット),ダイレクトの 4 種類がある。このうち,モードは Polymoog のプリセットとしての音が,ダイレクトではサウンド・ジェネレーター・チップからの直接の音が出力される。

 それぞれのアウトから出てくる音色は全く異なっている。たとえばプリセット 1 のストリングスでは,RES アウトでは中域に強いピークある音,VCF アウトではスロー・アタックの弱いフィルター・サウンド,モードでは細いストリングス・サウンド,ダイレクトでは太いストリングス・サウンドが出力される。これらを混ぜ合わせて音作りをするわけだが,RES と VCF のボリュームを両方上げると位相の関係で音が出なくなってしまうこともある。こういう場合にはそれぞれのパラ・アウトから音を出し,別々のスピーカーで鳴らしてやる必要がある。


●Polymoog のマニュアルに写っている写真はプロト・タイプのもので実際の製品と少しだけ違っている。マニュアル写真では,キーのスケールが F スケールになっていたり(商品は E スケール),プッシュ・ボタンの形状が微妙に違っていたりする。

●Polymoog の代表的なユーザーとしては前述のキース・エマーソン,そしてパトリック・モラーツやラリー・ファーストなどがいる。また YMO もストリングス・サウンドで Polymoog を使用しており,最近ではテクノ系ファンの間で,このストリングスの音を作るのに Polymoog が欲しいという人が多いようだ。

 Polymoog は内部の部品点数が多いため,故障も多く修理調整も大変である。あまり調子のよくない Polymoog なら 20 万円以下のものもたまに見かけるが,購入の際には程度のチェックと故障時の対策を考えてから買わないと,えらいことになるので注意が必要だ。特に分周用のチップは飛びやすい!

 しかし,見た目の良さは抜群なので,持っていれば人に自慢できるのは間違いない。ステージで使えば人気者になれるだろうが,持ち運びで壊れる確率は高いだろう。

 なおキース・エマーソンは愛用の Polymoog を 1994 年末に手放してしまった。


外部とのインターフェイス

CV/ゲートのイン/アウト:なし

MIDI:改造は不可能