概要:
楽器について
1970 年秋にアメリカで行われた AES コンベンションで発表された, MOOG のライブ向けモデル。
Minimoog が発売されるまでのシンセサイザーは,どれも大型でパッチ・ケーブルを必要とするマニアックかつ高価なものであった。当時すでに数種類の大型シンセ( MOOG -III 等)を開発していたモーグ博士 は,それらの重要な部分を抜き出し,パッチ・ケーブルなしでも使用できるようにした小型モデルを設計した。これが後世に残る、シンセサイザー史上最も有名な Minimoog となったのである。
経営方針によるトラブル等,幾多の問題を抱えながらも 1981 年まで生産され続けた名器である。
当時の定価(1976年のカタログより)
Minimoog 本体:65万円
取扱説明書(日本語)サウンドチャート付
リボンコントローラー:12万2千円
パーカッションコントローラー:12万2千円
サンプル&ホールド:22万2千円
フットペダルコントローラー:2万8千円
本体価格はその後,何度か変更になった。ちなみに 79 年の値段は 49万5千円。
Minimoog の本体と鍵盤部分を切り離したスピリットもあり,こちらは 79万円だった。
仕様:
(カタログ原文のまま掲載しているため意味のわかりにくい部分があります)
●音源(VCO):
音源の数:5(オシレーター VCO 3,ノイズ 1,外部入力/マイク,プリアンプ)
発振器の発振周波数:0.1 ~ 20,000 Hz(音域切替/6 段階)
短時間発振周波数安定度:± 1 %
発振波形:三角波,のこぎり波,三角波とのこぎり波の合成波(発振器 1 & 2 のみ)
矩形波(波形率 3 段階切替可能)
ノイズ:ホワイトノイズまたはピンクノイズ
プリアンプ入力:10 mV(min)2 V(max)
プリアンプ入力インピーダンス:100 KΩ以上
●フィルター(VCF)
フィルター特性:可変低域フィルター(カットオフ周波数において共振ピーク値可変,24dB/oct.カットオフ特性)
カットオフ周波数の可変範囲:40 Hz ~ 20 KHz 連続可変(9 オクターブ)
レゾナンスによる自己発振可能
●ボルテージコントロールアンプ(VCA)
アンプの数:2(アンプはコントゥアジェネレーターにより制御されているものと,外部コントロール電圧により制御されているものの 2 つ)
アンプのダイナミックレンジ:80 dB
●コントゥアジェネレーター
コントゥアジェネレーターの数:2(アッテネーター経由でフィルターを制御するものとそのVCAを制御するものの 2 つ)
アタック時間制御範囲:10msec.(ミリ秒)~ 10 sec.(秒)
ディケイ時間制御範囲:10msec.(ミリ秒)~ 10 sec.(秒)
コントゥア電圧による周波数およびフィルターカットオフ周波数の変動幅:0 ~ 4 オクターブ
連続可変
●オーディオ信号出力
ハイレベル出力:通常 0.5 V,出力定格インピーダンス 3 KΩ
ローレベル出力:通常 15 mV 出力定格インピーダンス 1 KΩ
ヘッドホーン出力:最大 0.3 V(8Ωステレオヘッドホーンの場合)
●コントローラー
鍵盤接続:常時(a)コントロール・オシレーター 1 および 2 と(b)トリガーコントゥアジェネレーターの2つの回路に接続。鍵盤はコントロール・オシレーター3およびフィルターに切替可能。
鍵盤部:標準時44鍵,低音優先式
鍵盤グライド効果の変化範囲:1 msec(ミリ秒)~ 1 sec(秒)/オクターブ連続可変
ピッチベンド範囲:最低 5 半音(2 音半)
モジュレーション変化範囲:0 ~ 1 1/4 オクターブ
●コントロールおよび電源接続
外部ピッチコントロール入力特性:1V の電圧変化にたいして 1 オクターブの周波数変化,精度±2%
外部フィルターコントロール入力:精度 ± 5 %
外部アンプコントロール入力:ゲイン幅は 0 ~ 4V の電圧変化により変化
外部トリガー入力:スイッチ ON により 2 つのコントゥアジェネレーターの両者を作動させる。
補助DC電源ソケット:+ 10V および - 10V,電流 50mA
●寸法および重量
総寸法:72cm(W)×41cm(D)×14cm(H)
本体重量:12.7 kg
梱包重量:20.3 kg
●電源仕様
100/135V,50/60Hz,10W(最大消費電力)
パネル:
フロント・パネル:
Minimoog のパネルは左からポルタメント/ピッチ関係,VCO,ミキサー,VCF/VCA,アウトプットという構成で作られている。
VCO は 3 つあり,VCO 3 は LFO としても動作する。この場合には音源としての VCO は 2 個となる。
ミキサーは 3 つの VCO,ノイズ ・ジェネレータ(ピンク/ホワイト),外部入力の計5種類の音量レベルを決めるボリュームがある。
VCF は通常のローパス・タイプのフィルター(24 dB/oct)が使用されている。カットオフ・フレケンシーと,エンファシスがある。VCF 用にはアタック,ディケイ,サスティンの 3 つのコントゥア・ジェネレーターとその電圧の VCF へのかかり具合を調整するアマウント・オブ・コントゥアのボリュームがある。
VCA にも VCF と同じくアタック,ディケイ,サスティンの 3 つのコントゥア・ジェネレーターがある。
アウトプット・セクションにはヘッドフォン・ボリュームとアウトプット・レベルのボリュームが独立してあり,また 440 Hz(=A)の基準音発振器がついている。
リア・パネル:
リア・パネルにはアウトプット端子のほかに,CV/ゲート関係のイン/アウトがついている(この CD-ROM 収録の写真では Midi 改造されているため,関連するボリューム類が多数ついている)。CV は 1 V/Oct の規格に準じたものであるが,ゲートは MOOG 社の規格である S -トリガーであるため,他機種とのゲート接続には簡単なインターフェイスが必要となる。
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