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MC-4:

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MC4ALL
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  ウンチク :

●MC-8 のデビューから 4 年も経った 1981 年に発表されたのが,この MC-4 である。MC-8 で問題のあったオペレーションの考え方の間違いを克服し,さらに使い勝手が格段と向上している。ただしステップ入力の考え方の違いから MC-8 と併用するのはほとんど不可能に近かったし,MC-8 からのユーザーは,習慣的に MC-8 のデータ打ち込みを MC-4 でやってしまい,データをメチャメチャにしてしまうという悲惨な事件が続発した。


●MC-8 と 4 の違いで最も大きな問題点は,データ入力の際のステップ送りの考え方にある。MC-8 ではデータの数字を打つとステップ・カウンターが進む。エンター・キーでデータを入力しても次の数字を打つまではステップ・カウンターは進まない。しかし MC-4 ではデータを入力し,エンター・キーを押すとステップ・カウンターは次の音符の位置に移動するのである。

 具体的に言うと,MC-4 で 2 小節目の 3 個目にあるデータを修正したい場合には,単純にそのステップを呼び出して数字を打ち直すだけでいい。ところが MC-8 では数字を打つとカウンターが進んでしまうため,2 小節目の 3 個目の音を修正したい場合には,まず 2 小節目の 2 個目の音を呼び出しておく。この状態で数字を入力するとカウンターは 1 つ進み,修正したい場所になるというわけである。

 MC-8 の数値入力の考え方は明らかにおかしいが(発想が音楽ではなくコンピューターのデータ入力に近い),慣れてしまうと『そんなもんか』と思ってしまい違和感は全くなくなってしまう。


●MC-4 でのデータ形態はほぼ MC-8 と同じで,CV,ステップ,ゲートの 3 つで構成されているが,このほかに補助的に使用する CV 2 と MPX というデータが作れる。CV 2 はメインの CV 1 に対して音量や 2 ボイス目の和音用データとして使用できる。また MPX はスイッチのオン/オフ等に使用し,たとえばある場所だけでポルタメントをオンにしたい,といった場合に使用する(System-100M のポルタメント・ユニット 165 のようにゲート信号でスイッチの切り替えができる機材が必要となる)。いずれの場合も CV 1 を基準にデータを作っていく。

 また,ステップは各音符の長さ,ゲートはステップ中にどのくらいの長さゲート信号をオンにするかの値を入力する。同じ 4 分音符の長さでも,ゲート信号を長く出せばレガートに,短く出せばスタッカートになるというわけである。


●MC-4 でのステップ・タイムの推奨値は 4 分音符=120 である。この場合 8 分音符は 60,16 分音符は 30 となり,4 拍子の曲なら 1 小節のステップ・タイムのトータルは 120×4=480となるわけである。この 4 分音符を MC-4 上でいくつとして入力するか?をタイム・ベースと呼んでいる。タイム・ベースはユーザーが好きなように変更することもできる。ちなみに MC-8 時代のタイム・ベースの推奨値は 4 分音符=48 であった。タイム・ベース 48 だと,複雑なハープのアルペジオなどではかなり音符がギクシャクしてしまう。

●現在の Midi シーケンサーのほとんどが,グラフィック・ディスプレイに多数のデータを表示しながら音楽データ作りができる。しかし,MC-4 の時代には多くの音楽情報を数字と限られた種類の文字しか表現できない小さなディスプレイに表示していた。そこでこのような劣悪な環境の中でも演奏データを作りやすくするためのよう々なユーティリティー機能が搭載されている。

 たとえばステップ・エラー機能では各小節ごとのステップ・タイムの合計を計算していき,各チャンネルのステップ・タイム合計値がチャンネル 1 に対して違っている場合,どのチャンネルがいくつ違っているか教えてくれる。基本的には各小節でのステップ・タイムの合計は全チャンネルとも同じになっていなければならない。でないと演奏が途中からバラバラになってしまう。

 もっとも,このステップ・タイムのズレを逆に利用して不思議なフレーズを作るということもできた。たとえば各チャンネルに和音のデータを入力してやる(Ch 1 にド,Ch 2 にミ,Ch 3 にソのように)。一応普通に演奏できるデータが完成したら,Ch 2 の最初に 8 分音符の休符を,Ch 3 の最初には 4 分音符の休符を入れてやる。するとステップ・エラーで見る限りではエラー・メッセージが表示されるが,これを無視して演奏させると,全体がアルペジオのようなフレーズになるのである。

 この手の手法では完成したデータに余計なデータを足したり,引いたりしてみると結構斬新なフレーズができることがある。これは最近の Midi シーケンサーではほとんど不可能に近い。


●パネル上の表示にはないが,インサート・キー→デリート・キーの順にキーを押すとステップの分割が,逆にデリート・キー→インサート・キーの順に押すと分割されたステップの併合ができる。

 たとえば 1 個の CV 1 を 10 個に分割した場合,ゲートはあたかも 1 つの電圧が続いて 1 つの音符が鳴っているように聞こえるが,内部ではデータが 10 個に分割され,これを CV 2 や MPX に使用することができる(通常は 1 つの CV 1 に対して 1 つの CV 2 や MPX しか使えない)。ステップを分割すれば同じ音程の中で音量が徐々に変化していくような電圧を CV 2 で作ることもできる。

 この辺の細かな裏技はマニュアルにしか記載されていない。したがって中古の MC-4 を購入する場合にはコピーでもいいからマニュアルを手に入れるべきだろう。


●MC-8 ではコンピューターに 8080 というタイプを使用していたが,MC-4 では Z-80 というものが使用されている。当時のコンピューター・チップは 80 系,68 系と Z-80 系の 3 種類が多く使用されていたが,楽器では Z-80 が使用されている場合が多かった。

●MC-4 では単純なパターンを作るとき以外には,曲の打ち込みに譜面が必須となる。現在の Midi シーケンサーは,ちょっと思いついたフレーズを弾いてみて,よければそれにリズムをつけてみたり,切り張りしたりして1つの曲にしていく,という作業が簡単にできるようになっている。しかし,MC-4 ではそういったことはほとんど不可能である。譜面には各小節ごとに小節番号を記入し,同じフレーズが続く場合にはどこからどこまでを何回繰り返すか?というのを前もって記入しておくのがよい。


●MC-4 をいまだに使い続けているユーザーの一人にヴィンス・クラークがいる。彼に言わせると Midi はタイミングのズレがあり,リズム隊などでジャストな位置で音が鳴らないのが気に入らないが,CV/ゲートを使ったシーケンサーではそれがない,と言っている。MC-4 でも内部データを CV/ゲートに変換する際に微妙なタイム・ロスはあるはずだ。しかし,それを受ける側のアナログ・シンセは信号がくればほとんど瞬時に発音する。ところが Midi 楽器ではこのタイミングにズレが生じている。ほんの数ミリ秒ずつの違いだが,気にしだすと結構気になる。本気でタイトなリズム隊を作ってみたい人には MC-4 とアナログ・シンセは必須の機材となるだろう。面倒だが 1 度やってみたら病みつきになること間違いなしです!


●古いタイプの MC-4 では静電気の関係で急にメトロノームが鳴って,ディスプレイがチカチカする,と言った現象が発生する,という噂が流れたことがある。ただしデータに損傷を与えるようなことはなく,ユーザーの寿命が 1カ月半ほど縮まるだけですむ。この現象は,ROLAND に修理に出せば簡単に直してくれた。


●MC-8 ではレコーディングの際,シーケンスの途中からシンクして演奏をするというのは不可能だった。しかし MC-4 では SBX-80 のように SMPTE に対応したシンク・ボックスがあれば途中からの演奏もシンク可能で,多重録音派には大変便利になった。この場合,MC-4 は途中からのスタート待機状態にしておき,シンク・ボックスの方で指定した場所からシンク信号を送るようにセットすればよいのである。


●MC-4 ユーザーで有名なのは何といっても冨田勲,そしてマニピュレーターの代表格である松武秀樹,海外ではビンス・クラークあたりであろう。


外部とのインターフェイス

CV/ゲートのイン/アウト:あり

MIDI:改造は不可能

その他:DIN シンク,テープ・シンクのイン/アウトあり