item1 item3 item4 item5

Solus:

見たいパネルをクリックしてください

solusall
item1
item3
item4
item5
item6

   概要  ウンチク  その他

item10

  ウンチク :

● どう考えても設計ミスな機種。この設計ミスを逆手に取れるユーザーに期待しましょう。

● Solus はオデッセイの構成からサンプル&ホールド,ノイズ,AR 等を除いた簡易構成になっている。また,コントロール信号のルーティングもスイッチを減らし,使用頻度の高い内部結線だけを残して簡略化,コストダウンをはかっている。


● Solus はキツイ感じのフィルター・サウンドを得意とするが,後で述べるようなフィルター部分の設計ミスがあるため,音作りは非常に難しい。


●前作 Axxe まで採用されていたピッチ・ベンダーの PPC は Solus では姿を消し,再びボリュームによるベンダーが登場している。結局 ARP は最後までホイール・タイプのベンダーを採用しなかったわけだが,さて今回 PPC が採用されていないのは

 1. ARP の経営状態が危なくて PPC 用の部品を買い入れできなかった。
 2.やっぱり PPC は使いにくいと判断されたので元に戻した。

 さてどっちでしょう?


● Solus / Axxe の2機種は ARP の廉価版シンセサイザーなわけだが,さすがに安くするためにケースの作りなどがちゃちい! 写真でもわかるように鍵盤手前に持ち運び用の取っ手がついており,運送時にはフタをしめてここを持つわけだ。ところがこいつがメチャクチャバランスが悪く,取っ手を持って持ち上げるとケースが足にぶつかってくるのである。もうちょっと何とかしろよ!という感じであります。こういった気配りは日本製品に遠く及びません。


● ARP 倒産寸前というだけあって開発のための調査にも予算がさけなかったんだろうな,という部分が多数ある。まずはマニュアル・コントロール部のビブラート・デプス・ボリューム。通常ここにビブラート・デプスのボリュームがあるということは演奏中にビブラートのかけ具合を調整しながら弾く,ということを前提にしているはずである。

 ところが Solus では採用しているボリューム全体がゴムでも入っているかのようにグニャグニャとしていて重いのである。したがってこのボリュームを演奏中に瞬時に上げ下げすることは至難のワザとなる。下手するとビブラート・デプス・ボリュームの上げ下げのし過ぎで腱鞘炎なんて笑えない話になりそうなくらいである。


● ARP のフィルターは機種によって設計段階で抵抗の数値に間違いがあり音がこもる,というオマヌケな話があるが, Solus ではそのパターンがさらにエスカレートしている。

 私の持っている Solus では VCF のカットオフ・フレケンシーが,ある場所から突如効き出すのである。ほとんどボリュームを数ミリ動かしただけでカットオフの最低値から最高値まで一気にかけ上っていく! これはツマミを手で動かしたときだけでなくカットオフの位置を ADSR や LFO の電圧で動かしたときも同じである。ディケイの短めの音を作ろうとしたときなどの VCF のかかり具合はスサマジイものがある。瞬時にプシュ!と音がして後は無音になってしまうのである。

 まあ善意に解釈して,もしかして異常に鋭いアタック音が欲しいときには使えるかも...と思っておこう。ハードコア・テクノっぽいサウンドを作りたい人には結構オススメかもしれません!

 で,このどう見ても変な VCF だがショップの話では他の Solus も同じような症状を呈したと言っている。ということは少なくとも世の中に 2 台はこういうとんでもない仕様になっちゃった Solus が存在するということだ。壊滅寸前だった ARP の社内の混乱をかいま見るようなネタではある。


●さて動かしにくさもさることながら Solus のビブラートにはまた,トンデモナイ設計ミスが隠されている。通常ビブラートというのは LFO の信号を VCO につないで音程に対してモジュレーションをかけることをいうわけだが, Solus ではその信号が VCF にまで行ってしまっている。VCF のキーボードCV のボリュームを上げると VCF にも LFO からの信号が行ってしまい,グロウル効果がかかってしまうのである。ビブラート・ボリュームのアウトが VCO ではなくキーボードCVに接続されてしまっているのである。

 もしかしたら ARP の元技術者は『いや,それはそういうビブラートの考え方なのだ。』と言いわけするかもしれない。しかし,VCF にはそれとは別にLFOからの信号をコントロールするボリュームが存在するではないか。

 さらになんとこの LFO から VCF に入る信号と,キーボードCV に乗って VCF に到達するビブラート信号(元は LFO の信号)は位相が上下逆なのである! これはどういう事態を引き起こすかというと,VCF にグロウルをかけているとき,ビブラートのボリュームを徐々に上げていくと,ビブラートからの LFO 電圧と元々の LFO の電圧が打ち消し合ってしまい,ある所で全くグロウル効果のかからない点ができてしまうのである。


●というわけで再び出る疑問は『もしかして,僕の Solus は初期出荷の不良品で,シリアルが若い番号なのでは?』ということになるわけだ。そこで, Solus をひっくり返してシリアルチェック,ところが!なんと Solus にはシリアルを記入したプレートがないのである。普通どんな電気製品にも製品のシリアルと電圧等を明記した銘板が貼られているはずだが...元々あったものが剥がれた様子もない。とにかく ARP が倒産を免れるために,何でもいいから製品を出荷したかった...それが Solus 。というのが僕の推理です,いかが?!


● Solus のフィルター・ブロックは他の ARP 製品と同じくエポキシで固めたブラック・ボックスが使用されている。したがってフィルターが壊れた場合,ブロックごとの交換が必要になり,専門の知識があり,補修パーツを確保できるショップでないと修理が大変になる。

●コントロール系の設計ミスの問題さえなければオススメしたいところだが,惜しい!

 ただし上述のように異常に過激なサウンドを作れるので,変な音がほしい人は一応チェックをいれてみるといいかも。まあたいがいの人は呆れるだろうけどね。


外部とのインターフェイス

 CV/ゲートのイン/アウト:あり

 MIDI:5G-MIDI 改造可能。価格は7万2千円(1985年)。

 改造は Five-G 販売のワンオーナー品のみ。