概要:
楽器について
1978 年に発売された ARP のアンサンブル・キーボード。 Quadra の名前が表すようにベース,ストリングス,ポリフォニック,リード・シンセの 4 つのセクションが装備されている。
ストリングスにシンセや他の機能を付加した製品には中途半端なものが多かったが,この製品は非常によく考えられている。
当時の定価
国内価格不明
仕様:
鍵盤: 61 鍵,C ~ C タッチ・センス付
ベース:低域 2 オクターブ,C ~ B
ストリングス:低域 1 オクターブを除く 4 オクターブ C ~ C
ポリフォニック:低域 1 オクターブを除く 4 オクターブ C ~ C(ベース・オフの時)
低域 2 オクターブを除く 3 オクターブ C ~ C(ベース・オンの時)
リード・シンセ:全音域= 5 オクターブ C ~ C(ベース・オフの時)
低域 2 オクターブを除く 3 オクターブ C ~ C(ベース・オンの時)
パネル・ボタン:タッチ式
プリセット:16
●ベース・セクション
VCO: 周波数レンジ:65 Hz ~ 250 Hz ウェーブ・フォーム:パルス波 エンベロープ・ジェネレーター: 最大ディケイ・タイム:5 Sec.
●ストリングス・セクション:
エンベロープ・ジェネレーター: 最大アタック・タイム:6 Sec. 最大リリース・タイム: バリアブル:6 Sec. プリセット:1 Sec.固定
●リード・セクション:
VCO: 周波数レンジ:16 Hz ~ 16 KHz ウェーブ・フォーム:鋸歯状波/矩形波 10 %のパルス波 最大ビブラート幅:±1 半音 最大トリル幅:5 オクターブ パルス・ワイズ・モジュレーション・レンジ: 10 % モード:25 % ~ 60 % 50 % モード:60 % ~ 80 %
VCF: ローパス,24dB/oct 周波数レンジ:16 Hz ~ 16 KHz レゾナンス:最大Q= 30(意味不明) 最大 LFO モジュレーション幅:±1 オクターブ ADSR スィープ:min.2 オクターブ,Max.8 オクターブ エンベロープ・ジェネレーター: 最大アタック・タイム:1 Sec. 最大ディケイ・タイム: SUST LOW オフ:4 Sec. SUST LOW オン:2 Sec. 最大リリース・タイム:2.5 Sec. ポルタメント:Min.1.5 Sec/oct
●ポリフォニック・セクション:
VCF: ローパス,24dB/oct 周波数レンジ:16 Hz ~ 16 KHz レゾナンス:最大Q= 30(意味不明) 最大 LFO モジュレーション幅:±1 オクターブ ADSR スィープ:min.5 オクターブ,Max.8 オクターブ エンベロープ・ジェネレーター: 最大アタック・タイム:1 Sec. 最大ディケイ・タイム: バリアブル:2 Sec. プリセット:2 Sec.固定 最大サスティン・タイム: バリアブル:3 V プリセット:3 V 固定\ 最大リリース・タイム:3 Sec.
●LFO:
周波数レンジ:.5 Hz ~ 15 Hz ウェーブ・フォーム:サイン波,矩形波(S/H 用)
●フェイズ・シフター:
S/H による最大周波数偏差:1 オクターブ
●トリル:
トリル・スピード・レンジ:2 Hz ~ 20 Hz
●タッチ・センサー:
スィープ・スピード・レンジ:.1 Hz ~ 5 Hz
●インターフェイス・ジャック:
CVイン/アウト:1 V/Oct ゲート・イン:Min.2.5V(リード&ベース) ゲート・アウト:10V(リード&ベース) トリガ・イン:8V パルス,最低 10マイクロ秒で作動 トリガ・アウト:10V パルス,60マイクロ秒出力
●エクスターナル・オーディオ・イン:
入力レベル:Max.7V
●オーディオ・アウトプット:
全オーディオ・アウトともインピーダンス=680Ω モノ・アウト(XLR & 標準ジャック): ハイ:10V p-p Max. ロー:1V p-p Max. クォード・アウト: ベース:5V p-p Max. ストリングス:10V p-p Max. ポリ・シンセ:12V p-p Max. リード:3V p-p Max. ステレオ・アウト: 10V p-p Max.
パネル:
フロント・パネル:
Quadra のフロント・パネルはベース,ストリングス,ポリフォニック・シンセ,フェイザー/ミキサー,リード・シンセ,LFO/サンプル&ホールドの 6 つのセクションに分かれている。
また鍵盤上部には 16 のメモリー・スイッチが並んでいる。 Quadra で使用されているスイッチは全てタッチ・スイッチ方式で,指先で軽く触れるだけでよい。
ベース・セクションにはエレクトリック・ベースとストリングス・ベースの16’,8’のスイッチがそれぞれ並んでいる。ストリングス・ベースはエレクトリック・ベース・ディケイ,エレクトリック・ベース・レゾナンスで音色キャラクターが変えられる。レゾナンスは自己発振しない。またエレクトリック,ストリングスの両方のチューニング・ボリュームと音域切り替えスイッチ(トグル・タイプ)がある。この出力のうち,エレクトリック・ベースはベース・アウトに,ストリングス・ベースはストリングス・コーラス・ジェネレーターに送られ,隣のストリングス・セクションの信号とミックスされる。
ストリングス・セクションには 8’,4’の音源スイッチがあり両方を一緒に鳴らすこともできる。またこの音には AR のエンベロープ・ジェネレーターがついており,ストリングス・アタック・オン,ストリングス・リリース・オンのスイッチをオンにすることにより,アタッ ク,リリースをマニュアルで変えることができる。ストリングスと隣のポリフォニック・セクションは共通の発振器を利用している。この発振器は通常,鋸歯状波を発振しているが,ホロウのスイッチを入れることにより,波形を矩形波に変えることができる。この場合にはポリフォニック・セクションの波形も矩形波になってしまう。
ポリフォニック・セクションの音源は上記のようにストリングス・セクションと共用になっている。8’,4’のスイッチではその音源の音域を選ぶ(両方選ぶことも可)。この信号は通常のシンセと同じ構成の VCF/VCA に送られ音作りができる。ADSR は VCF/VCA に共通で,VCF にはカットオフ・フレケンシー,レゾナンス(自己発振不可)と,ADSR ,LFO のデプス・ボリュームがある。これらのボリュームをマニュアルで動かしたい場合にはそのボリュームの下にあるスイッチを押して操作を行う。
リード・セクションにはデュオフォニック・シンセサイザーが搭載されている(モノフォニック・モードもある)。パネルのスイッチ/ボリューム類は通常のシンセとほぼ同じ構成になっている。 Quadra 独特のスイッチ/ボリュームについて説明しておこう。ホールド/フラットは,フット・スイッチをつないでいる時に有効で,ホールドになっているとき,鍵盤を押さえてフット・スイッチを踏むと,その鍵盤の音程がホールドされ鳴り続ける(VCF 等の設定にもよるが)。フラットでは,ペダルを踏むとリード・セクションのピッチが半音下がり,離すとゆっくり元の音程に戻っていく。その隣のトリル・スイッチは入れると押した鍵盤とかなり離れた音程の間でトリルが行われるようになる。トリルの速度は,その上のトリル・スピードのボリュームで変えられる。その他 ADSR やビブラート関係,波形セレクトのスイッチ/ボリュームが並んでいる。
LFO/サンプル&ホールド・セクションは VCO 2 の鋸歯状波を LFO のクロック・タイミングでサンプルし,その信号をフェイザーに送る。
フェイザー/ミキサーでは各セクションからの音をミックスしたり,それをフェイザーに送ったりする。フェイザーには独立した LFO が搭載されている。また LFO ではなくディケイ固定のエンベロープやペダル,サンプル&ホールドの信号で駆動することも可能である。フェイザーにはレゾナンスのスイッチ/ボリュームがあり,フェイズ効果をより強調してやることもできる。
また鍵盤左サイドには ADSR のトリガー・モード・スイッチと,リード・シンセの VCO 1,2 用に独立したポルタメント・ボリュームがついている。鍵盤右サイドにはタッチ・センサー・モード・スイッチとシーケンサー・モード・スイッチがついている。この2つはリード・シンセ用である。タッチ・センスの信号は VCA/VCF に送るか VCO に送ることができる。また,シーケンサー・モード・スイッチはアルペジェーターのモードのことであり,アルペジオのパターンをアップにするか,アップ&ダウンにするかを選択できる。
リア・パネル:
リア・パネルには各セクションのモノ・アウト,ステレオ・アウト,4 つのセクションの独立したアウトと外部入力のジャック,ペダル/フット・スイッチ・ジャック,外部とのインターフェイス関係のジャックがついている。ミックス・アウトについては独自にハイ/ローのレベル切り替えスイッチがついており,キャノン・コネクターもついている。
ペダル・ジャック類はリード VCF(カットオフ・フレケンシー)のコントロール用,ポリ/フェイザー(フェイザーのセレクトがペダルのときはフェイザーを,そうでないときはポリフォニック・セクションのカットオフ・フレケンシー)のコントロール用,ボリューム・コントロール用のペダルの接続ジャックがある。またフット・スイッチ・ジャックにはポリフォニック・セクションのサスティン・ペダル,リード・セクションのホールド/フラット用とポルタメント・オン/オフ用のジャックがついている。
インターフェイス・ジャックには,ベース・セクションの CV イン/アウト,ゲート・イン/アウト,リード・セクションの CV イン/アウト,ゲート・イン/アウト,トリガー・イン/アウトがついている。CV アウトについては VCO 1 用と VCO 2 用の独立した 2 つの CV アウトが出ている。
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