b.音色:
・音色は、音の柔らかい硬いの違いで、波形の違い=音源がどのように振動しているか?の違いによって変わる。
・全体的に柔らかい音色の波形は丸い部分が多く、硬い音は尖った形で複雑な場合が多い。
・もっとも純粋な混じり気のない音(柔らかい音)をサイン波(正弦波)という。シンセサイザーのサイン波で作られる代表的な音に口笛やフルートがある。
サイン波
440 Hz のサイン波の音を聞く
・打楽器を除く通常の楽器音(ピアノ、トランペット、バイオリン、人声等)の場合、複雑な硬い音はサイン波が特定の音列に沿って鳴ることにより成り立っている。この音列を倍音列と呼んでいる。
低いCから始まる倍音列
・上記の例は低いCの倍音列であるが、Dを弾いた場合には全体が移調され以下のような倍音列の音程が鳴る。
低いDから始まる倍音列
・倍音の間隔は高次の倍音に行くにしたがって狭くなっていく。
・低い音程の場合、人間の耳には2000倍音以上の音が聞こえている。
・倍音の周波数は非常に正確な整数倍関係にある。例えば基音(1倍音)を100Hzとした場合、各倍音は以下の表のようになる。
基音を 100Hz とした場合の倍音と周波数
<参考>
上記のように周波数は非常に奇麗な整数倍の値を示す。古代ギリシャでは弦楽器の音程と弦の長さや星の運行の規則性をまとめて神聖な物として哲学/科学/宗教が合体して学問となっていたようである。そしてこれを元に音階(旋法)の概念が発生したと考えられる。詳しくは以下のような西洋音楽史を読んでみると面白いと思う。
・各倍音の量は時間と共に刻々と変化する。例えばピアノの場合、最初高次の倍音が豊富に含まれているが、徐々に高次の倍音が減っていき(音が柔らかくなっていく)、最終的にはほとんど基音のみになって音が消えていく。
・シタールのような音では最初は基音がほとんどなく高次の倍音ばかりだが、時間が経つにしたがって、高次の倍音が減っていき、基音が大きくなっていく。
<参考>
以下の動画は1〜16倍音までを1つずつ追加していき、その波形と音を聞いている。
上記の動画の音を聞くとわかるように、耳が良ければ、ある音程にどのような倍音が含まれているか判断することができる。ただし、音程が動くと複数の倍音が鳴っているのではなく、ひとつの音色として認識されるようになる。
・基音の音量を1として、2倍音を1/2、3倍音を1/3、4倍音を1/4、5倍音を1/5...n倍音を1/n という比率で足していくと、以下の図のような波形になる。
この波形は鋸歯状波(きょしじょうは、又は、のこぎり波、英語だと Sawtooth=ソウトゥース)と呼ばれ、ピアノや弦楽器、金管楽器等、非常に多くの音源波形として使われる。
鋸歯状波
鋸歯状波の音を聞く
・上記の鋸歯状波の倍音列から偶数次の倍音(2、4、6、8...2n)を抜くと不思議にも波形は四角い形になる。このような奇数倍音(1、3、5、7、9...2n−1)のみの波形を矩形波(くけいは、最近言われないが方形波、英語だとRectangular=レクタングラー または Square=スクエア)という。
この波形はクラリネットのようなシングルリード系の木管楽器の音源として利用される。またベース系のサウンドに利用されることも多い。
矩形波
矩形波の音を聞く
<参考>
以下に特徴的な倍音で成り立っているマリンバの音の解析動画を掲載する。マリンバでは、9倍音が際立って強い傾向がある(9番目のスライダーの動きに注意)。
アナログシンセでマリンバの音を作る場合にもドの音に対して2または3オクターブ上のレの音がなるように2つのオシレターをセットする。
・楽器の音や自然音には倍音列に含まれない倍音を含む音もある。このように倍音列に含まれない倍音を、非整数次倍音と呼ぶ。
・非整数次倍音が含まれる代表的な楽器音にベル系の音(金属を叩いた音)や打楽器の音がある。たとえばチューブラーベルズや教会の鐘の音がこれにあたる。これら非整数次倍音の音を作る場合にはシンセサイザーにあるリングモジュレーターを使用することが多い。
リング・モジュレーターに2つのオシレターのサイン波を送り、両方のピッチを変えながら演奏。
・非整数次倍音以外の音で、風の音や波の音はシンセサイザーのノイズジェネレーターを使って作られる。
最初にホワイト・ノイズ、次にピンク・ノイズを聞く。
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