●ROLAND 初のコンピューター採用リズム・ボックス。基本的には従来のオルガンに乗せて使うタイプのリズム・ボックスの形を踏襲しているが，自分でパターンの作れるプログラム・セクション，シンバルやハイ・ハットのサウンドを従来のような単なるノイズ音から独特の金属音にした事，ロックやディスコといった流行のパターンを取り入れた事など随所に新しい発想が取り入れられている（それまでのリズム・ボックスではロックというパターンがあっても，古くさいロックン・ロールのパターンが入っているだけだった）。
このマシンの発想を継いで，TR-808 や 909 といったリズム・マシンが作られていったのである。
●CR-78 では TS-1 という打ち込み用スイッチを使って独自のパターンを作ることができる。パターンは 11 種類（楽器 10+アクセント）の音源から 4 つを選んで 2 小節の長さ入力できる。しかし TS-1 を使っての打ち込みは大変で，パンフレットの言葉にあるようにまさに『リズムをたたき込み』という感じでボタンを叩く必要がある。そもそも TS-1 はリズムのオン／オフをコントロールするときに使うフット・ペダルなわけで，こいつを手で叩くというのは相当のパワーが必要となるのである。
●CR-78 では TS-1 で叩いたリズムを1小節あたり 48 の分解能で記録していく。これは 16 分音符でも 3 連譜でも演奏できるようにしたためである。したがって 1 拍の分解能は 12 となるわけだが，この分解能で TS-1 を自分の思い通りの位置で叩くのは至難の技である。何度やってもうまくいかず TS-1 を床に叩き付けた人も多いことだろう。作ったパターンはバッテリー・バックアップされるが，外部にセーブ／ロードしたりすることはできない。かなり真剣勝負の世界であった。
●それまでのリズム・ボックスではサンバやボサノバ，ビギンといったオジサン好みのパターンは入っていたが，ロックやディスコというパターンはほとんど入っていなかった。CR-78 のロックのパターンは 8 ビート・ロックからロックンロール，16 ビート・ロックまで豊富に入っている。
しかし画期的だったはずのディスコのパターンはとんでもなかった。どこの誰が聞いてもこのパターンがディスコだとは言わないだろうし，だいたいこのパターンで気持ちよく踊れる奴はそういないはずである。
このディスコ・パターンはアメリカの某オルガニストが作ったのだが，本場アメリカではこんな複雑なリズムが流行っているんだろうか？と当時，情報不足だった日本人はたまげたものである。これについて開発スタッフに質問したところ『パターン作成をお願いした相手がこれでいい，と言いきってしまったのだから，このパターンを入れざるをえなかった。』と言っていた。
．．．というくらい，変なパターンなのだが，ディスコ 2 のパターン A はフィル・コリンズのファースト・ソロ・アルバム『夜の囁き』の 1 曲目冒頭で延々使用されている。よかったね！
●リズムのバリエーションを使うと数小節に 1 回の割合でリズムにオカズを入れることができる。ここにはスイングからサンバ，ロックまでのオカズが入っているため，ロックのパターンを演奏中にスイングのオカズを入れたりすると，いきなりリズムが変わり凄いことになる。
●CR-78 では外部にトリガー信号を出したり，外部クロックに同期した演奏をしたりすることができる。トリガー出力のパターンはスイッチでセレクトする。8 ビートでは 1 小節に 8 個のパルスを，16 ビートでは 16 個のパルスを出力する。またスイッチがコンビネーションになっている場合には，ベース・ドラムかハイ・ボンゴが鳴ったときにパルスを出力する。この信号をシーケンサーなどに送れば，パターンに同期したベースなどが演奏させられるわけだ。
また外部からのクロックで CR-78 を同期演奏させる場合には 1 小節に 48 個のパルス信号を送りこめばよい。こういった場合，CR-78 にはクロックをインターナルにするかエクスターナルにするかを切り替えるスイッチなどという気のきいたものはなく，EXT クロックの端子にプラグを差し込むと，外部クロック・モードになるという原始的な方式をとっている。
●CR-78 のサウンドは ROLAND の最近の製品でもサウンド・カードなどで供給されている。したがって，どうしても本物をいじりたい人以外は ROLAND 製品を買えば音ネタは使い放題である。ちなみに私は CR-78 がまだビンテージなどと呼ばれる前に 1 万円で知り合いの楽器屋から買い込み，森尾由美（懐かしい！）のクイズ・コーナー！！！のバッキングに使用させていただきました。
外部とのインターフェイス
CV／ゲートのイン／アウト：トリガー・アウトのみあり。出力パターンはスイッチでセレクト。
MIDI：改造は不可能
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