Analog Synthesizer Lecture

VCF(Voltage Controlled Filter):

a:VCF の基本   b:色々なシンセの VCF パネルを見てみる

b:色々なシンセの VCF パネルを見てみる:

 以下に何種類かのシンセの VCF 部分のパネルを解説する。


Minimoog の VCF パネル:

Minimoog の VCF パネル

Minimoog の VCF パネル

 ・Moog 製品では Resonance を EMPHASIS と表記している(上段中央)。

 ・Moog 製品では Envelope Generator を CONTOUR GENERATOR (コントゥア・ジェネレーター)と表記している。下段の3つのボリュームがそれで、ATTACK TIME、DECAY TIME、SUSTAIN LEVEL の3つがある。この3つは VCF 用の Envelope Generator である。

 ・上段右端の AMOUNT OF CONTOUR(コントゥアの深さ)は VCF にかかる Envelope Generator の深さを調整する。

 ・左端スイッチの最上段は FILTER MODULATION で Filter にかかるモジュレーションのオンオフを行う。

 ・VCF への KCV は左端スイッチの下段2つで行い、どちらか1つがオンなら50%、両方がオンなら100%の KCV が VCF に送られる。


 


Moog Liberation の VCF パネル:

Liberation の VCF パネル

Liberation の VCF パネル

 ・Liberation でも Resonance を EMPHASIS と表記している(左セクション中央)。

 ・Envelope Generator は CONTOUR GENERATORと表記されている。VCF 用は右側の青い3つのボリュームがそれで、ATTACK、DECAY/RELEASE、SUSTAIN がある。

 ・Envelope Generator の DECAY/RELEASE は右端の RELEASE BOTH のスイッチをオンにすると、DECAY で設定したのと同じ長さの RELEASE になり、鍵盤から手を離しても DECAY/RELEASE で設定した長さだけ音が残る。スイッチがオフだと、鍵盤から手を離すとすぐに Envelope Generator の電圧はゼロになる。

 ・VCF にかかる Envelope Generator の深さは、左セクションの AMT で調整する。

 ・VCF への KCV は左セクションの下にある KEYBOARD TRACK のスイッチで OFF、1/2、1 の三段階を選択できる。



 


Moog IIIc の VCF パネル:

Moog IIIc の VCF パネル

Moog IIIc の VCF パネル

 ・大型モジュラーシンセの Moog IIIc では、ユーザーのチョイスによってモジュール構成が異なる場合がある。標準的な VCF 構成は上記写真のように 904-A VCF(LPF)、904-B VCF(HPF)、そして両サイド(904-B と 904-A)のモジュールを組み合わせて Band Pass または Band Reject フィルターを作る 904-C Filter Coupler(フィルター・カプラー)となっている。

 ・LPF、HPF では Cutoff Frequency は FIXED CONTROL VOLTAGE、LPF では Resonance は REGENERATION と呼ばれている。

 ・LPF、HPF 共にコントロールする周波数帯域を FREQUENCY RANGE のスイッチで LOW/HIGH または 1/2/3 で切り替える事が出来る。
 

 ・904-C の Filter Coupler は中々変なモジュールである。VCF の基本編で LPF と HPF のカーブを良く見ればわかるように、LPF と HPF をシリーズにつないだ場合、両方の VCF が通過させる周波数帯の重なった山の部分が最終的に出て来る音になる。つまりこれは BPF 音になるわけである。Filter Coupler はこの LPF と HPF を組み合わせて同時に動かす役目をする。

 ・Filter Coupler が OFF の状態では左右両側にある VCF は単独で動作する。しかし Filter Coupler の中央上スイッチが BAND REJECT または BAND PASS になっていると、左右の VCF は連動して動作するようになる。この時、Filter Coupler の SIGNAL IN/OUT に VCO 等のオーディオ信号が来ていると、Filter Coupler の CENTER FREQUENCY のボリュームは Cutoff Frequency のように、BANDWIDTH のボリュームは通過またはカットする周波数帯の広さを調整するように動作する。

 ・つまり Filter Coupler は Band Pass か Band Reject フィルターとして動作するが、それ自体はフィルター機能を持っているわけではなく、左右の VCF を連動させる仲介役を果たすユニット、という事である。

 ・Filter Coupler が Band Pass か Band Reject で動作している時、左右の VCF に信号をつなげば、Filter Coupler に送った CV によって各々の VCF も動作している。恐らくこれを利用した音作りもありだと思うが、動作を直感的に理解するのは難しいだろう。

 ・Filter Coupler は LPF と HPF を組み合わせて動作しているので、スイッチを BAND PASS にして使用する時、HPF のカットオフ・フレケンシーを上げ、LPF のカットオフ・フレケンシーを下げていると、通過できる音がなくなってしまい、音が出なくなる事もある。また LPF の REGENERATION や FREQUENCY RANGE も動作するので、Band Pass、Band Reject のフィルターを使っている時には左右の VCF の設定にも注意を払う必要がある。



 ・なお最初に書いたように、モジュラーシンセではユーザーのチョイスにより内部結線も変更可能なので、Filter Coupler を上記のように使用しない結線も可能かと思われる。例えば左右両方とも LPF にするとか...ただし、それに効果があるのかどうか?は分からない。

 ・CV の内部結線はないので、KCV や Envelope Generator 等の CV を使いたい場合にはモジュール下部の CONTROL INPUTS に必要な CV を接続してやる必要がある。



 


Octave Cat の VCF パネル:

Octave Cat のVCF パネル

Octave Cat のVCF パネル

 ・ここでは Cutoff Frequency を Fc、Resonance を Q と表記している。
 ・MODULATION DEPTH では LFO の三角波、矩形波 または Sample and Hold の電圧、もうひとつは2つの Envelope Generator のうちどちらか、または VCO 1 のオーディオ信号でモジュレーションがかけられる。Q を上げて発振させた状態で、VCO 1 の信号でモジュレーションをかけるとリング・モジュレーターのような効果を得る事ができる。

 ・KCV は KEYBOARD CONTROL という表記のボリュームになっており、右一杯に回しきった時、100%の KCV が VCF にかかる。

 ・左上の VCO 1 AUDIO スイッチは、VCO 1 からのオーディオ信号のオンオフ切り替えに使用する。普通、VCO 1 を LFO として使用している時には OFF にしておく。



 


EML Electorcomp-101 の VCF パネル:

EML Electrocomp-101 のVCF パネル

EML Electrocomp-101 のVCF パネル

 ・ここでは Cutoff Frequency を TUNE と表記している。

 ・上段右の MODE は LP(Low Pass Filter)、BP(Band Pass Filter)、HP(High Pass Filter)をボリュームで連続的に可変できる。各々の中間位置では、独特なフィルターサウンドを得る事が出来る。

 ・左下の FILTER CONTROL では CV を選択/レベル調整する事ができる。3つのボリュームは各々中央がゼロで、一番上は左に回すと OSC 1(VCO 1)で、右に回すと Envelope Generator 2 で、2番目のボリュームは左に回すと OSC 4(VCO 4)または外部信号(表記は EXT で、EXT のコネクターにジャックをさすと OSC 4 がキャンセルされ、EXT からの信号が優先される)、右に回すと SAMPLER(Sample and Hold)が、3番目のボリュームは左に回すと KB1(Keyboard CV 1)、右に回すと KB2(Keyboard CV 2)の CV を調整する事ができる。なお、この機種の鍵盤は最高音最低音の2音優先なので、KB1 は最低音、KB2 は最高音の KCV を意味する。


 


Oberheim SEM の VCF パネル:

Oberheim SEM のVCF パネル

Oberheim SEM のVCF パネル

 ・古いタイプの Oberheim のシンセは複数の Synthesizer Expander Module(=SEM)で構成されている。SEM が2つなら 2 Voice、4つなら 4 Voice、8つなら 8 Voice のオーバーハイム・シンセ、という呼ばれ方をしていた。

 ・Cutoff Frequency は FREQUENCY と表記。CV in は MODULATION と表記され、下部のスイッチで Envelope Generator 2/EXT(外部 CV 入力)/LFO が選べる。ボリュームは中央がゼロ、右に回すと選んだ CV がプラス方向に、左に回すと CV がマイナス方向に VCF にかかる。

 ・中段右のボリュームは左に回しきってクリックした位置が BP(Band Pass Filter)、ボリュームを左にした状態が LP(Low Pass Filter)、ボリュームセンター位置が NOTCH(Band Reject Filter)、右に回しきった時が HP(High Pass Filter)となり、各々の中間位置ではフィルタータイプを連続的に可変できる。

 ・最下段のボリュームは VCO 1、2、EXT(外部オーディオ信号)のレベル調整で、VCO は左に回せば SAW(鋸歯状波)、右に回せば PUL(パルス波)が、EXT では左なら #1 の入力につながった信号が、右なら #2 の信号が VCF に送られる。

 ・SEM には KCV のボリュームもスイッチもない。

 

 


Roland SH-3A の VCF パネル:

Roland SH-3A のVCF パネ

Roland SH-3A のVCF パネル

 ・LFO のモジュレーターは GROWL という表記になっている。LFO の波形セレクトは上部のスイッチで行う。選べる波形は VCO と同じく鋸歯状波/矩形波/サイン波である。
 ・中央にある ENVELOPE のスイッチは ADSR(Envelope Generator)、バイオリン系のゆっくりしたカーブ(タイムの変更は不可能)、ピアノ系の鋭いカーブ(タイムの変更は不可能)の3つを選べ、その下の SENS で VCF へのかかり具合を調整する。

 


 


Roland Promars の VCF パネル:

Roland Promars のVCF パネル

Roland Promars のVCF パネル

 ・LPF の Cutoff Frequency は CUTOFF FREQ、Resonance は RES と略して書かれている。

 ・HPF は CV コントロールの出来ない簡易型である。

 ・KYBD FOLLOW は0〜3までの4段階切り替えになっている。

 ・MOD は LFO からの深さと Envelope Generator の深さの2つのボリュームがある。

 ・ENVELOPE には ADSR の4つのボリュームと、その極性をプラス・マイナス逆にする POLARITY スイッチが付いている。

 

 


Roland SH-101 の VCF パネル:

Roland SH-101 のVCF パネル

Roland SH-101 のVCF パネル

 ・Cutoff Frequency は FREQ、Resonance は RES、Envelope Generator の深さは ENV、LFO モジュレーターの深さは MOD、Keyboard Follow は KYBD と略して書かれている。

 

 


Roland System-700 の VCF パネル:

Roland System-700 のVCF パネル

Roland System-700 のVCF パネル

 ・2タイプの VCF。Cutoff Frequency は CUTOFF FREQ、Resonance は RES と略して書かれている。

 ・左の VCF 中央に VC. RES と表記されているのが Resonance の CV in。

 ・右の VCF 中央のスイッチは FILTER MODE で、フィルタータイプを HP(High Pass)、BP(Band Pass)、LP(Low Pass)に切り替えられる。

 ・各々の右中央に見える赤と緑の LED は出力のオーバーロード確認用。

 ・上の5つのジャックとボリュームは VCF へのオーディオ信号入力。

 ・下の5つのボリュームは MODULATION で、CV 入力。そのうち一番左は Keyboard CV が内部接続されている。

 ・なお表記されていないが、左のタイプの VCF が 24 db/oct、右が 12 db/oct になっている。



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