Music Column

3. のだめカンタービレとローズマリー・ブラウンの霊感:

注:この原稿は無料誌デジレコのために2004年5月に書いた物に加筆訂正しています。最初に原稿を書いた時点ではまだ「のだめ」は結構マニアックな層にしかウケていませんでした。その後、のだめが大ヒットになったのは皆さんご存知の事と思います。また、その後のだめは文中にある初見にも強くなりました。メデタシメデタシ!


 まさか知らない人はいないと思うけど、一応音楽系漫画のリストなぞ...


 

 最近、音楽を題材にしたコミックでダントツに面白いのが「のだめカンタービレ」だ(くどいようですが、この原稿は2004年に書かれています)。クラシックが題材で、過去の物と違ってドタバタコメディーなのだが、取材を物凄く良くしているらしく、色々な楽器の演奏シーンとか演奏者の性格とかが非常に緻密に描かれている。この間、うちにやって来た某桐朋音大のヴァイオリン若手ホープ3人組もこれを見て「あるある」なんて笑っていた。


 このコミックの主人公は野田恵(だから”のだめ”)と言い、初見は全くダメだが一度音を聞くとピアノですぐ弾けるというタイプで、まあ私と御同類である。実は私も譜面を見るのが苦手なのに、クラシックピアノが結構弾けていた。それは私の両親が音楽家だったため、ピアノの先生の所で習う曲を、まず母親が完成品として聞かせていたため、私はそれを耳コピーして演奏していたのだ。両親がクラシック系の音楽家という事もあり、回りの人々は私が譜面にも強いと思っていたらしいが、事実は全然違っていた。


 なので、徐々に曲が複雑になって来ると、耳で聞いた物を自分の弾き易いキーに勝手に直して弾いていたりした。例えばショパンの子犬のワルツは変ニ長調だが、私はこれを勝手にハ長調に直して弾いたりしていた。おかげで原曲と同じキーで弾かなければならないピアノ発表会で子犬のワルツを弾く事になった時、挫折してしまい一時的にピアノのレッスンをやめていた。


 で、現在コミック8巻が出ているのだが、この中ではかなりスピリチュアルな方向にイッてしまっておられる。何かに取りつかれたように凄い演奏をしたかと思うと、突如腑抜けた演奏をしたり、練習を覗いて見たら謎の行動をしていたり、という感じである。(なお、その後の展開でスピリチュアルなのかそうでないのか、ちょっと微妙な話になっている)。


 実際のピアノ演奏は人によって違うと思うけど、私にはなんとなく分かる部分がある。私が一番ピアノを上手く弾ける時は「自分がそこにいなくなっている」時なのだ。演奏中に一瞬でも「自分」という意識が出て来ると、その途端に演奏はボロボロになってしまう。まあ、取りつかれてるのかどうかわわからんが、やはりイッてしまっている気がしなくもない。


 という話で思い出すのが「ローズマリーブラウンの霊感」というキワモノレコードだ。こいつはローズマリーブラウンというオバサンに突然リストの霊が取り憑いて霊界で作曲したという新曲を演奏させてしまったというシロモノだ。しかも憑依して来た霊はその後増え、ベートーベンだのドビュッシーだのまで登場し、シューベルトは未完成だった交響曲の後半部分も送って来たという。


 ベートーベンも交響曲は9番までしかないのに、あの世で書いた10番ってのを送ってきたらしい。まあ、聞いてみるとなんとなくそんな感じ、ではあるんだが、決定的証拠は欠けるような気もする。未完成交響曲は作曲者が作っている最中に無念にも死んでしまって完成しなかったという印象が強いが、1〜2番の出来が良かったんで続きを書く気が失せてしまったんで完成させなかったってな説もあるわけだし...


 ローズマリーはほとんどピアノは弾けなかったという事になっているが、その辺の真偽も分からない。例えばタモリが白鍵だけ使って「チックコリアの曲」とか言って演奏するギャグがあったが、これは知ってる人が聞くと「ああ、あるある!」という具合で、ちょっと曲の特長がつかめると才能があればそれ風を演奏する事は可能だと思うんだよね。それに、交響曲だったらピアノ演奏じゃなくてオーケストラのスコアを書いた方が信憑性が高くなるだろう。オケのスコアは並み大抵の人間じゃ書けないわけだが、霊媒には自動書記って字をスラスラと書いちゃうなんて技もあるわけだから、これが出来てたらちょっと疑うのは難しくなると思うんですよね。


 ってな事を書くと夢がないなんて言われそうだがね。このレコードCD化されているかどうかは不明だけど、中古盤屋でレコードを見つけたら話のネタに買って、クラシックのウンチクを述べる時の素材にちょいと使うと女の子からソンケーの眼差しで見られるかもよ?!

 

追記:これは昔書いた文章だけど、最近になってサムラゴーチ事件なんて物が発生しました。



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