Music Column

2. ゼビ本の音楽業界における拡散について:

注:この文章は1998年頃に自前ホームページのエッセイコーナー用に書かれたものを加筆訂正しています。



 その昔、まだTPOってコンピューターミュージックのグループや、うる星やつらのレコーディングをやってた頃、ちょうどゲームセンターではゼビウスというゲームが大流行していた。ゼビウスを知ってる人は多いと思うけど、このゼビウスあたりからゲーム内に隠れキャラが潜んでいて、何かの操作でそれが出て来る、というのが流行り出したのである。キャラの出し方は様々で、ゲームを何度もしつこくやってると分かってくるものから、ゲーム攻略本でも見ない限り絶対に出せないようなものまで色々だった。そういった中でゼビウスの隠れキャラはゲームを何度もやっていると、自機の敵感知センサーが思わぬ所で反応して隠れキャラが出てくる、というのが多く良心的だった記憶がある(場所によってはそうでないとこもあったかもしれんが、もう覚えてない)。


 上記のように、テレビのうる星やつらの第2期BGMレコーディングは、TPO1のレコーディングと同じ時期に行なわれていた。うる星はキティのスタジオで作業が行なわれてたんだけど、この時キティではゲームソフト制作を行なうという事で色々と準備が行なわれていたのである。そんななか、うる星担当のディレクター早川氏がどこから手に入れてきたのかゼビウスの攻略本なるものをスタジオに持ち込んできたのである。まだ攻略本なるものが一般化する前の事だったように思う。


 ちょうど当時のキティのスタジオKRS(現青葉台スタジオ)の2階ロビーにはゼビウスがあって全スタッフがハマってたんだけど、その本にはゼビウスの裏技が網羅されており、特別なキャラクターの出し方やその位置が詳しく書かれていた。その頃は、まだまだワープロなどほとんど一般的でなかったため、本はほとんどが手書きでかかれたのをコピーして作ったものであった。制作はうる星やつらのファンの人達らしく、たぶんその辺のルートから入手したんだろうと思われる。


 その本を参考にキティのスタジオのゼビウスで隠れキャラ出しを練習して見ると、出るわ出るわ!!!おかげで、うる星のトラックダウン中はほとんどスタジオにいないでずーーっとゲームをやっていたのだった。おかげで私はキティ関係者の中で一番ゼビウスに詳しくなってしまったのである。


 で、その本を分けてもらい、今度はTPO1をレコーディングしていたソニーの信濃町スタジオに出向いて技を披露したのだ。ソニーのスタジオロビーにもゼビウスが何ケ所か置いてあったんだけど、自分達の使ってるスタジオ以外の場所にあるゼビウスにも出向いて、本を元に習得した技を得意気に公開したわけである。丁度その時、同じソニーの別スタジオではラッツ&スターなどがレコーディングしており、私がゼビウスで不思議なキャラクターをガンガン出していると、みんな何だ何だ?とわらわらと集まって来てしまったのである。っつーこって、そのメンバーなどにもゼビウスの技を教えてあげたりし、それがまたその周辺の人達に伝わる、という連鎖反応が起こり始めたのだ。


 さらに、TPO1のレコーディングでエンジニアをやってくれたアトムさん(お父さんが物理学者だそうで、本当にそういう名前なのである)にもこの技を教えたんだけど、このアトムさんは私の使ってたスタジオの隣でレコーディングしていた細野晴臣さんのエンジニアもやっており、この技が細野さんに伝わったというわけ。これが元ですっかりゼビウスにはまった細野さんは勢い余ってゼビウスのゲーム中のフレーズを元にその場でレコードを作ってしまった。これが細野さんが作ったゼビウスレコードの制作の真相というわけで、ここからさらに音楽業界へとゼビウスの輪が広がっていったというわけです。


 というわけで、出来たのが以下の CD(元はレコード)らしい。

 



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