Music Column

2. クロスウィンドの頃 2/メロトロン破壊事件の顛末:

注:この文章は1998年頃に自前ホームページのエッセイコーナー用に書かれたものを加筆訂正しています。
 


   

 

 クロスウィンドの3枚目のアルバム「そして夢の国へ」のレコーディングではメロトロン400等のキーボードを多用してたんだけど、このレコーディング中にメロトロンをぶっ壊されるという事件が発生した。警察ってのが自分の過失を如何に誤魔化すかの好例だと思うので、楽器を運ぶ可能性のある人は心して読むよ〜に!


 で、私は車の免許を持ってないので、機材はいつもキティレコードのスタッフが楽器で運送していた。クロスウィンドのレコーディング時にもキティの楽器車に機材を満載して移動していた。レコード会社の楽器車なんで積んでる楽器は必ずしも私の物だけではなく、他のバンドの楽器も多数あったのだ。問題の日にも楽器車には私の機材の他に同じキティ所属の来生たかおさんの機材が積まれていて、キティのスタジオで私の機材を下ろした後で、来生さんがリハをやってる池袋のスタジオまで行く、という段取りになっていた。しかしメロトロンはデカくて重い上に、たまたまその時楽器車の一番奥に積み込んでしまったため、おろすのが大変だという事になり、まずはすぐに使う機材だけをキティのスタジオに下ろし、その後池袋のスタジオで他の機材を下ろした後、再びキティのスタジオに戻って一番奥のメロトロンを出そうという話になったのだ。


 ところがキティのスタジオで機材を下ろした後、来生さんのリハ中にスタッフが楽器車を池袋のスタジオの近くに路上駐車したため、駐車違反で車ごとレッカー移動されてしまうという事件が起こった。この時、レッカーで持ち上げられて傾いた楽器車に唯一積まれていたメロトロンはバタンとひっくりかえってしまい、その衝撃で鍵盤はふっとび、内部のテープフレームが曲がってしまった。


 で、このメロトロンひっくりかえし事件の責任所在はいかに?って話でキティで弁護士を通じてレッカー移動した時の担当者などに証言を得たりした。問題の焦点はメロトロンはレッカー移動が原因で倒れて破損したのかどうか?だったんだけど、少なくともキティのスタジオを出る時点ではメロトロンはちゃんとした状態だったし、池袋で楽器を下ろした時点でも、あれほど大きな楽器がひっくりかえっていればすぐにわかるはずだ。


 最初レッカー移動を指揮した婦警は「移動するとき後部の窓から中を見たら白い物と銀色の物が見えた」と非公式の場で話していたと聞いた。もしそうだとすれば、白いのはメロトロン本体で、銀色に見えたのはその上に置かれた機材ケースだったはず...「これはいい話を聞いた!だとすれば婦警が車内を見た時点では間違いなくメロトロンは立った状態にあったはず。なぜなら、メロトロンが倒れていれば窓から白い物体は相当のぞきこまなければ見えるはずはないし、その上に置かれた銀色のケースはメロトロンが倒れていれば、窓から確認するのは不可能なはずだ(楽器車後部は中が見えないようにほとんどの部分を黒く塗っていた)」というわけで弁護士とも確認を取り合いった。


 ところが、後日公式の場でこの婦警は「移動時に車の後部窓から中を覗いたが、何も見えなかった」と証言を覆し、おかげでレッカー移動のせいで楽器を壊されたという証明は不可能になり、結局楽器はキティがお金を出して修理する事になってしまった。


 ご存知の方も多いと思うが、メロトロンは内部に複数台のテープレコーダーが入ったような構造をしているため非常にデリケートな楽器だ。激しく破損してしまうと完全修復はかなり難しい。私のメロトロンはレオミュージックに修理依頼をして鍵盤部分など随分調整してもらったが、完全には復調できなかった。私が持っていたメロトロンはかなり状態の良い一台だったんだが、この事件のおかげで、鍵盤のタッチにばらつきが出てしまい、使用前には中を開けて機構部分をチェックしないと音程が不安定になったり、テープが途中で止まってしまうという状況になってしまった(まあ、現在では養生のかいあってだいぶ調子いいんだけど)。


 婦警は自分に不利な供述は覆す。世の中そんなもんだ。でもいつまでも世の中がそんな状態で通ると思うなかれ!!!きっといつかしっぺ返しが来ると思うのだ。


 それで思い出すのが昔キティの入っていたビル。渋谷の宮益坂の角にあったんだが、下の階には銀行(信用金庫だったかもしれない)が入っていた。キティのスタッフとエレベーターでおしゃべりしながら降りていったら、この銀行の女性行員が「音楽やってる人は不真面目」みたいな発言を堂々としてくださった。ほとんど業界関係者に対する嫉妬からだろうが聞かされた方は不愉快だ。当時はバブリー上り調子の真っ最中で誰も銀行の経営がヤバくなるなんて考えてもいなかった。だけどそれから10数年して潰れる銀行も出始めた。その時、私は心底思ったね「ざまあ見やがれ」って。



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